API(Application Programming Interface)は、2つのアプリケーション間で通信を可能にするソフトウェアの仲介役です。これには、サーバー、クライアント、またはアプリがサーバーとやり取りするケースが含まれます。以下のタイムラインは、APIの進化を示し、APIの構築方法の基礎を理解する助けとなります。
現在でもRESTはAPI構築のための人気のあるツールとして広く利用されています。しかし、2012年、FacebookはRESTとは異なる新しい手法を求め、そこで登場したのがGraphQL(Graph Query Language)です。
GraphQLとRESTの比較を深掘りする前に、それぞれの基本と特徴を簡単に見てみましょう。
RESTとは?
REST(Representational State Transfer)は、「リソースごとに固有のエンドポイントを持つ」という設計思想を指します。この概念は、2000年にロイ・フィールディングによって発表された論文が起源です。その後、2006年にはTwitterなどの企業によって普及が進みました。
RESTは、ネットワークベースのソフトウェア向けのアーキテクチャ概念です。特定のツールセットや仕様があるわけではなく、HTTPやAMQPなど、どの通信プロトコルを使うかについても特に制約を設けていません。また、RESTはAPIをクライアントから切り離して設計することを目的としています。その柔軟性とシンプルさが、多くの開発者にとってRESTを魅力的な選択肢にしている理由です。
REST APIの主な課題
REST APIにはいくつかの課題があります。その中でも特に問題となるのが複数回のリクエストが必要になる場合です。これは、複数のエンドポイントからデータを取得しなければならない状況で起こります。一つのエンドポイントだけでは必要なデータをすべて取得できない場合、複数のリクエストを送信する必要があり、それがパフォーマンスの低下や効率性の問題を引き起こすことがあります。
以下の表は、3つのエンドポイントを例にしたデータ取得の流れを示しています:
エンドポイント | 説明 |
---|---|
GET /users | 全ユーザーを一覧表示する |
GET /users/:id | 特定のユーザー(idを指定)の詳細を取得する |
GET /users/:id/projects | 特定のユーザーのプロジェクト一覧を取得する |
このように、特定のユーザーの情報や関連データを取得する場合、まずユーザー一覧を取得し、次に特定のユーザー情報をリクエストし、さらにそのユーザーのプロジェクト情報を取得する、といったように複数回のリクエストが必要となります。このようなプロセスは、特にデータ量が多くなったり、エンドポイントが増える場合に大きな課題となり得ます。
REST APIの課題とその解決方法
クライアントアプリで特定のユーザーに関連するプロジェクトや、さらにそのプロジェクトに関連するタスクを取得する必要がある場合、バックエンドチームは追加の開発が必要になる場合があります。これに対応するためには、以下のようなアプローチが考えられます:
アプローチ例
- タスクを含むプロジェクトを返すクエリを利用する
エンドポイント例:GET /users/:id/projects?include=tasks
この方法では、特定のユーザーに関連するプロジェクトと、そのプロジェクトに関連するタスクが一度のリクエストで取得できます。 - クライアントアプリでフィルタリングするための独立したエンドポイントを作成する
エンドポイント例:GET /projects?userid=:id&include=tasks
ユーザーIDに基づいてプロジェクトをフィルタリングし、それに関連するタスクを含むデータを返します。 - ユーザーに関連するすべてのデータを1つのエンドポイントで返す
エンドポイント例:GET /tasks?userid=:id
これにより、ユーザーに関連するすべてのデータを1つのリクエストで取得しますが、不要なデータまで返される可能性があります。
REST APIでの課題
- 過剰取得(Over-fetching)と不足取得(Under-fetching)
- 過剰取得: クライアントアプリが必要としない余計なデータが含まれる場合、通信量が増加し、パフォーマンスが低下する可能性があります。
- 不足取得: 必要なデータが不足している場合、追加のエンドポイントやリクエストが必要となり、効率が悪化します。
- 解決策: 特定のフィールドだけを取得するクエリを利用する例:
GET /users?fields=firstname,lastname
- バージョン管理とフィールドの廃止
REST APIが成長するにつれて、異なるバージョンをサポートする必要が生じます。一般的に、v1
をそのまま残し、新しいデータ構造を持つv2
を作成します。しかし、バージョン管理はAPIの保守を複雑にする可能性があります。
GraphQLによる解決
GraphQLはこれらの課題を効果的に解決します:
- 必要なデータのみ取得: クライアントが明示的にリクエストしたデータだけを返すため、過剰取得の問題が解消されます。
- バージョンレスAPI: 新しいフィールドや型を追加することで機能を拡張できるため、互換性を損なうことなくAPIを進化させることができます。これにより、バージョン管理が不要になり、RESTのように複雑な運用を回避できます。
GraphQLの柔軟性は、特にデータの関連性が複雑な場合や、クライアントごとに異なるデータニーズがある場合に強力な選択肢となります。
非予測的なデータの問題
RESTでは、サーバーからどのデータが返されるのか、具体的に予測することが難しいという課題があります。たとえば、返されるフィールドやその数などが事前に把握できないことが多いため、不要なデータを受け取る可能性があります。この点で、クライアント側の柔軟性が制限されることがあります。
一方で、GraphQLでは、クライアントが必要なフィールドを指定してリクエストを送るため、返されるデータを完全にコントロールできます。
- クエリ(データ取得)でも、ミューテーション(データ操作)でも、クライアントは何が返されるべきかを明確に指定可能です。
- 必要なデータだけを取得することで、過剰取得(Over-fetching)を防ぎ、効率的な通信が可能になります。
GraphQLの特徴
GraphQLのこの柔軟性は、特に以下の場合に役立ちます:
- クライアントごとに異なるデータ要件がある場合
- データ量を抑えて通信を最適化したい場合
- 必要な情報を確実に取得したい場合
このため、GraphQLは、データの取得や操作をより効率的かつ予測可能にするツールとして、多くの開発者に支持されています。
GraphQLとは?
GraphQLは、Facebookが2015年に公開した比較的新しいコンセプトです。サーバーからデータを取得するための新しい方法として、クエリ言語、仕様、ツール群で構成されており、HTTPを介して単一のエンドポイントで動作します。その特徴は、パフォーマンスと柔軟性の最適化に重点を置いていることです。
RESTとGraphQLはAPI構築の2つのアプローチとして比較されますが、厳密には同列に比較するのは難しい面があります。RESTはAPI設計のための伝統的なアーキテクチャスタイルであり、GraphQLはAPIの課題を解決するためのクエリ言語です。例えるなら、RESTが「リンゴ」で、GraphQLが「オレンジ」のような違いがあるものの、どちらも「フルーツ」という共通点を持っています 🙂
RESTとGraphQLの主な違い
GraphQLはクライアント駆動型アーキテクチャであり、フロントエンドアプリがサーバーから取得するデータの量や内容を決定します。一方、RESTはサーバー駆動型アーキテクチャで、すべてがサーバー側で設計されます。
以下の表は、GraphQLとRESTを簡単に比較したものです:
GraphQL | REST |
---|---|
API統合の一般的な課題を解決するための効率的で柔軟なクエリ言語 | API設計のための伝統的なアーキテクチャスタイル |
HTTP上で単一のエンドポイントを通じて展開 | 複数のURLで各リソースごとに展開 |
クライアント駆動型アーキテクチャ | サーバー駆動型アーキテクチャ |
自動キャッシュ機構なし | 自動キャッシュを利用 |
APIバージョニングなし | 複数のAPIバージョンをサポート |
JSON表現のみ対応 | 複数のデータ形式をサポート |
主に1つのツール(GraphiQL)でドキュメント化をサポート | OpenAPIやAPI Blueprintなどの幅広いドキュメント化オプションを利用可能 |
HTTPステータスコードでエラーを識別するのが複雑 | HTTPステータスコードで簡単にエラーを識別可能 |
GraphQLの主な特徴
- 単一エンドポイント: サーバーが提供するすべてのサービスを単一のURLで利用可能。
- クライアントがリクエストをコントロール: 必要なデータだけを取得し、過剰取得や不足取得を防ぐ。
- バージョンレスAPI: 新しいフィールドや型を追加するだけで拡張が可能で、後方互換性を維持。
RESTとの比較によるメリットとデメリット
- GraphQLは、効率性や柔軟性の面で優れていますが、キャッシュ機能が組み込まれていないため、手動で実装する必要があります。
- RESTは、HTTPステータスコードを使用して簡単にエラー処理を行う一方、GraphQLではエラー処理が複雑になりがちです。
どちらのアプローチを選ぶかは、プロジェクトの要件やチームのスキルセットに依存しますが、GraphQLは特に柔軟性を重視するモダンなアプリケーションに適した選択肢といえます。
GraphQLを使用する理由
GraphQLをRESTの代わりに採用するべき主な理由として、以下の3つが挙げられます:
1. ネットワークパフォーマンスの向上
GraphQLでは、クライアントが必要とするデータだけをリクエストできるため、余計なデータを送信する必要がありません。この効率性により、送信データ量を削減し、ネットワークパフォーマンスを向上させることができます。特に、モバイルアプリや低帯域幅の環境では、大きなメリットをもたらします。
2. 「Include vs Endpoint」問題の解決
RESTでは、特定のリクエストに関連するデータを返す際に、「リクエストに含める」か「新しいエンドポイントを作成する」かという選択がしばしば発生します。この問題は、GraphQLのスキーマとリゾルバ機能により解決されます。クライアントが返されるデータを自由に指定できるため、新しいエンドポイントを作成する手間を省けます。
3. 異なるタイプのクライアント管理
1つのAPIを複数のクライアント(iOSアプリ、Androidアプリ、ウェブアプリなど)で利用する場合、それぞれが要求するデータ構造や量が異なることがあります。RESTでは、クライアントごとに別々のAPIを作成しなければならない場合がありますが、GraphQLではその必要がありません。単一のエンドポイントで、クライアントが必要とするデータを個別にカスタマイズして取得できるため、APIの管理が簡単になります。
GraphQLの利点まとめ
- 効率的なデータ取得: 必要なデータだけを取得し、過剰取得を防止。
- 柔軟な設計: スキーマを使った統一的な設計で、エンドポイントの複雑化を回避。
- クライアント間の柔軟性: すべてのクライアントに対応可能な単一エンドポイントを提供。
GraphQLは、モダンなアプリケーションや複雑なデータ構造を持つシステムにおいて、RESTに代わる効率的かつ柔軟な選択肢となります。
参考リソース
GraphQLについてさらに深く学ぶための主なリソースを以下に紹介します:
1. GraphQL.org
GraphQLの基本から、仕様に関する詳細まで学べる公式リソースです。GraphQLの仕組みや設計原則を理解するのに最適なスタートポイントです。
2. How to GraphQL
GraphQLの実装に特化したリソースです。例えば、Apollo Serverについて学びたい場合、このサイトでは、どのようなフロントエンドフレームワークを使用してAPIデータを活用できるかを理解できます。なお、フロントエンドでデータを消費する際に特定のツールやライブラリを使用する必要はありません。通常のXmlHttpリクエストを行うことも可能ですが、その場合はエンドポイントに対してPOSTリクエストを送り、リクエストのボディにGraphQLクエリを含める必要があります。
GraphQLサーバーの活用例
- マイクロサービスへのゲートウェイ: GraphQLサーバーAPIは、他のマイクロサービスやデータベース、さらには他のREST APIとも直接通信できます。これにより、複数のREST APIからデータを取得し、それらを1つの情報源として統合することが可能です。
これらのリソースを活用することで、GraphQLの基本だけでなく、具体的な実装や応用方法についても深く学ぶことができます。
1. GraphQLとは何ですか?
GraphQLは、2015年にFacebookが公開したクエリ言語で、単一のエンドポイントを介して効率的かつ柔軟にデータを取得できるAPI設計手法です。
2. RESTとGraphQLの主な違いは何ですか?
RESTはサーバー駆動型で固定されたエンドポイントを使用するのに対し、GraphQLはクライアント駆動型で必要なデータだけを取得できます。また、GraphQLはバージョニングが不要です。
3. GraphQLの利点は何ですか?
必要なデータのみ取得し、過剰取得や不足取得を防止。
単一エンドポイントで複数のクライアントに対応。
マイクロサービスや他のREST APIを統合して利用可能。