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DDoS攻撃を防ぐための3つのステージ:効果的な対策と防御方法

DDoS攻撃を防ぐための3つのステージ:効果的な対策と防御方法

分散型サービス拒否(DDoS)攻撃とは、悪意のある攻撃者が大量のデータを標的のシステムやネットワークに送り込むことで、対象を圧倒し、正当なユーザーが利用できなくなるようにするサイバー攻撃です。

DDoS攻撃を受けると、システムは機能停止状態に陥り、完全に応答しなくなることも少なくありません。防御側は迅速に対応する必要があり、攻撃を遮断するために外部の支援を求めたり、リソースを一時的に停止したりする場合もあります。また、ログやアラート、その他の情報を使ってDDoS攻撃の種類を特定し、最終的には、セキュリティ構造を改善したり、将来的な攻撃を防ぐためのツールに投資したりして、攻撃からの回復を図ります。

第1段階:封じ込め

DDoS攻撃を受けると、リソースの動作が極端に遅くなり、保護のための変更を加えることさえ困難になる場合があります。攻撃を特定しない限り完全に止めることはできませんが、システムが悪意のあるトラフィックで溢れてアクセス不可能になっている場合、特定そのものが不可能です。

まず、CPU容量やメモリといった内部リソースを回復させるために、攻撃を一時的にでも停止する必要があります。ログを分離されたストレージやSIEMソリューションなどの外部リソースに送信している組織であれば、攻撃の種類を特定しながら同時に攻撃を遮断する作業を進められる可能性があります。

初期のDDoS対応戦術

単純なDDoS攻撃であれば、熟練した内部リソースを活用することで対処できる場合があります。しかし、基本的なDDoS攻撃であっても、ホスティング元のインターネットサービスプロバイダー(ISP)の支援を受けて上流で遮断しない限り、攻撃トラフィックが接続帯域やISPインフラに脅威を与え続ける可能性があることを忘れてはいけません。

初期対応として選択できるオプションには、インターネットやウェブホスティングなどのサービスプロバイダーへの連絡、サイバーセキュリティ専門家への相談、ネットワーク設定を変更して攻撃を遮断しDDoS保護を強化する、サービスを一時停止して変更を加えた後に再稼働する、またはより効果的な保護のための新しい技術を導入する、といった方法が挙げられます。

サービスプロバイダーへの連絡

状況によっては、インターネットやウェブホスティングのプロバイダーに連絡し、現状を報告するだけでDDoS攻撃を止められる場合があります。プロバイダー側がすでに攻撃を認識しており、トラフィックをブロックする作業を進めていることもあります。サービスプロバイダーは、攻撃が存在することを確認した上で、以下のような対策を講じて、悪意のあるトラフィックがネットワークに到達するのを防ぐことが可能です。

  • 帯域幅の拡張: 帯域幅を拡大することで、DDoS攻撃を耐えたり軽減したりすることができますが、費用対効果が高いとは限りません。
  • IPアドレスや範囲の変更: IPアドレスやDNS情報を変更することで、一時的に攻撃を止めることができます。ただし、新しいIPアドレスが攻撃者にターゲットにされるまでの間の対策にしかなりません。また、内部システムの多くを新しいIPアドレスに合わせて変更する必要があります。

プロバイダーへの連絡は効果的な手段ではありますが、それだけでは十分でない場合もあります。典型的なインターネットボットによるDDoS攻撃は100~500Gbpsに達することがあり、大規模な攻撃では1秒間に1億を超えるリクエストが送られることもあります。この規模の攻撃を防ぐには、最も大規模な企業でさえプロの支援なしでは対処が難しい場合があります。

サイバーセキュリティ専門家の雇用

熟練したプロフェッショナルと高度なツールやサービスを組み合わせて利用することは、DDoS攻撃への対策や将来的な攻撃からの保護において最も効果的な方法の一つです。具体的には以下のような手段があります。

  • サイバーセキュリティの専門家: セキュリティコンサルタントやMDR(マネージド検知および対応)専門家などに連絡を取り、攻撃を止める、将来的な攻撃への対策を強化する、そしてその他のインシデント対応ツールやサービスを推奨してもらうことができます。
  • クラウドサービス: クラウドベースのDDoS保護サービスは、DDoS攻撃を遮断するための最も包括的な選択肢を提供することが多いため、多くの組織がインフラの一部または全部をAWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウドプロバイダーに移行します。

サービスと保護対象システム間の接続を許可するようアクセス制御リストを更新し、他の接続をブロックして、DDoS保護サービスを迂回する経路がないようにする必要があります。ただし、クラウドプロバイダーであっても、組織内のネットワークから発生するDDoS攻撃を防ぐことはできないことを覚えておく必要があります。

プロフェッショナルなツールやサービスは投資に見合う価値がありますが、社内ソリューションを上回るコストがかかり、企業がすぐに負担できるものではない場合があります。また、攻撃を受けている最中に適任者を見つけることは、困難でストレスの多い作業になることもあります。

さらに、セキュリティ専門家は通常、ボットネットや攻撃ベクトルの記録を保持しており、迅速に対応し、攻撃が実行される前に防ぐことができる場合もあります。

標的となるIPアドレスと地域のフィルタリング

ログファイルを確認することで、ネットワークに関する重要な情報、特にDDoSトラフィックを生成しているIPアドレスや地域を特定できる場合があります。この情報を活用して、迅速かつ低コストでネットワーク防御を実施することが可能です。主なオプションには以下が含まれます。

  • IPフィルタリング: 特定のIPアドレスをブロックすることで、攻撃を遮断します。
  • 地域ブロック(Geo-blocking): 特定の地理的な地域からの接続をブロックします。

これらの方法は、チームが他の戦略を開発・展開するための時間を稼ぐことができますが、恒久的な解決策になることは稀です。攻撃者はIPアドレスを偽装(スプーフィング)したり、未ブロック地域のボットネットを利用することで、セキュリティ対策との「いたちごっこ」に発展する可能性があります。

さらに、ブロックした地域からの正当なトラフィックもリソースにアクセスできなくなるため、その地域での財務的損失や評判の低下につながるリスクがあります。加えて、これらのフィルタリングは、ブロック対象のトラフィックがネットワークに到達する前に遮断できるよう、通常はISPレベルで実施することが推奨されます。

DDoS保護オプションの有効化または強化

組織は、現在使用しているリソース(サーバーソフトウェア、ルーターファームウェアなど)に備わっているDDoS保護オプションが有効化されているか確認する必要があります。ネットワーク機器に以下のようなセキュリティオプションが搭載されている場合がありますので、チェックしましょう。

  • ルーターのDDoS保護機能: この機能を有効化することで、ネットワークに流入するトラフィックパケットの数を監視し、DDoS攻撃からネットワークを保護できます。
  • レートリミット(Rate Limiting): 特定の時間内に処理できるリクエスト数を制限するセキュリティ機能で、過剰なトラフィックを抑制します。

これらの機能は、多くのネットワーク機器に標準搭載されているため、攻撃が発生するに設定し運用を開始するのは比較的容易でコストも低く抑えられます。ただし、攻撃が進行中の場合、これらの機能は十分に効果を発揮しない場合があり、攻撃中に新たに展開することは難しい場合もあります。

サービスの停止

場合によっては、攻撃を受けているシステムを一時的に停止することが最善の選択肢となることがあります。この方法では、攻撃対象となっているサービスやリソースを隔離し、再稼働前にさらに強化することが可能です。具体例としては以下があります:

  • 特定のリクエストを停止: 特定のネットワークリクエスト(例:SYNフラッディング)による攻撃を受けている場合、接続リクエストをレートリミットすることで対応できます。
  • ダウンロードをブロック: 特定のサービスが非常に大きなファイルをダウンロードしようとしている場合、ウェブサイト全体には影響を与えずにダウンロード機能を一時的に無効化することで防御できます。

この方法は迅速で低コスト、かつ効果的にDDoS攻撃を止める手段となります。しかし、ダウンタイムは組織にとって混乱やコスト増につながる可能性があります。特にシステム全体を停止させた場合、その影響は大きくなることがあります。

新しい技術の導入

このステップは最も計画と設定を必要とし、理想的には攻撃が発生する前に実施するべきです。攻撃後に導入すると、決定が急ぎすぎたり、重要なポイントが見落とされるリスクがあります。検討すべきツールには以下のようなものがあります:

  • ファイアウォール: ネットワークトラフィックを監視し、セキュリティポリシーを適用して、不審なネットワーク活動や悪意のある攻撃をブロックするツールです。
  • セキュアウェブゲートウェイ: ファイアウォールと似ていますが、主に不審なウェブトラフィックをブロックすることに特化したツールです。
  • DDoS保護アプライアンス: DDoS攻撃を検出して阻止するために設計された専用デバイスで、ネットワークトラフィックを分析します。

これらのツールの欠点として、導入にはコストがかかり、設定や運用に時間と多くのリソースが必要である点が挙げられます。また、外部攻撃に対して完全に保護できるわけではなく、大規模な攻撃に対応するためのスケーラビリティが不足する場合もあります。

攻撃を受けている組織は、あらゆるオプションを検討し、現在の状況に基づいて最も効果的だと考えられるものを導入することが重要です。

非技術的なDDoS対応

DDoS攻撃への対応でインシデント対応チームが奔走している間でも、組織は他の関係者との対応を行う必要があります。攻撃後は、以下の非技術的な対応を実施してください:

  • 経営陣および関係者への通知: 組織のインシデント対応計画に従い、すべての経営陣および関係者に状況を通知し、定期的に最新情報を共有します。
  • 内部コミュニケーションの確立: 社員に対して、内部リソースの利用可能状況や、業務を遂行するための代替手段を知らせます。
  • 広報対応の調整: インシデント対応計画に基づき、顧客に対してシステムの状況を伝えます。
  • 保険会社への連絡: サイバーセキュリティ保険会社や規制当局(例:証券取引委員会など)、および法執行機関への通知を行います。

経営陣は、非技術的な対応を担当する専門チームをインシデント対応チームに組み込み、関係者との文書、口頭、および電話での連絡を調整・管理・実行できるようにするべきです。また、必要に応じて、経費の承認権を持つメンバーをチームに配置するか、攻撃からの復旧に必要な購入の迅速な承認を調整できる体制を整えることが推奨されます。

内部攻撃と外部攻撃

上記で紹介したDDoS攻撃対策の技術は、すべての攻撃に適用可能です。しかし、DDoS攻撃の種類や影響を受けるアーキテクチャによって、より有効な対策が異なる場合があります。内部ネットワークと外部リソース(例:オンラインゲームシステム)をDDoS攻撃から保護する際の違いを理解することが重要です。

  • 内部ネットワークの保護: 内部ネットワークをターゲットとする攻撃では、通常、組織内部のインフラ(例:サーバーやデータベース)を守ることが求められます。この場合、ファイアウォールの設定強化や内部IPアドレスの監視が効果的です。また、内部のセキュリティポリシーの遵守が重要となります。
  • 外部リソースの保護: 外部リソースをターゲットとする攻撃(例:ゲームサーバーやウェブアプリケーション)は、一般に広範なトラフィックを扱うため、クラウドベースのDDoS保護サービスやレートリミット設定が有効です。このような攻撃に対処するには、ISPやクラウドプロバイダーとの協力が鍵となります。

どのタイプの攻撃でも、ネットワークの構造や利用可能なリソースに基づいて最適な対応策を選択し、それぞれの攻撃に応じた保護を実施することが不可欠です。

内部および外部のルーター、サーバー、ウェブサイトに対するDDoS攻撃の停止

インターネットに公開されている資産(アプリケーションやウェブサイトなど)は、DDoS攻撃者にとって最も影響を与えやすいため、しばしば標的となります。これらのリソースをホストまたはサポートしているサーバーは、CPU、メモリ、帯域幅の過負荷に苦しむことがよくあります。

一方、内部のルーターやサーバーを狙う内部DDoS攻撃は、内部ネットワークのプロトコルやリソースをターゲットにするため、性質が大きく異なります。それでも、一旦攻撃が始まると、これらの異なるリソースを保護するためのステップには共通点があります。

外部資産へのDDoS攻撃への対策

  • 帯域幅の監視と拡張: 過剰なトラフィックに耐えられるように帯域幅を強化。
  • クラウドベースのDDoS保護サービスの利用: AWS、Google Cloud、Microsoft Azureなどのプロバイダーを活用。
  • ルーターやファイアウォールの設定強化: トラフィックパケットを監視し、不審なアクセスをブロック。

内部資産へのDDoS攻撃への対策

  • 内部ネットワークの監視: ネットワークプロトコルの不正使用やリソースの異常消費を検出。
  • アクセス制御の強化: 内部リソースへのアクセス権限を見直し、制限を強化。
  • ログの分析: 攻撃の種類を特定し、より精密な防御策を導入。

外部と内部の攻撃はターゲットや手法が異なるものの、いずれの場合も早期対応と適切なリソース管理が鍵となります。どちらのシナリオにおいても、攻撃を防ぐだけでなく、迅速な復旧計画を用意しておくことが重要です。

1. 初期攻撃のブロック

ログファイルを分析し、攻撃に関連するIPアドレスをブロックすることから始めます(内部または外部の攻撃に応じて)。必要に応じて、特定の地域をブロックするジオフェンシングや、内部攻撃の場合はトラフィックを生成している侵害されたローカルデバイスの電源を切ることも検討してください。

ただし、DDoS攻撃者を完全に停止できない場合もあります。例えば、攻撃者が病院の人工呼吸器をボットネットに変えた場合、患者の健康に重大な影響を与えるため、病院が人工呼吸器の電源を単純に切ることはできません。

さらに、多くの攻撃者は、攻撃がブロックされたと気づくと戦術や攻撃元を切り替えるほど洗練されている場合があります。それでも、ブロックは一時的な効果にとどまる可能性があるものの、より効果的な防御を実施するための時間を稼ぐ助けとなります。

2. 攻撃を回避する

ブロックが効果を発揮しない場合は、サーバーのIPアドレス、ルーターのIPアドレス、またはウェブサイトのURLを変更し、DDoS攻撃の経路からサーバーを外す方法を試みてください。この方法も、ブロックと同様に一時的な効果しかない可能性がありますが、実行に時間がかかる他の対策を準備するための時間を稼ぐことができます。

IPアドレスやURLを変更することで、一時的に攻撃者のターゲットを外し、リソースの負荷を軽減できますが、攻撃者が新しいIPアドレスを特定する可能性がある点にも注意が必要です。そのため、この回避策は他の防御手段と組み合わせて使用するのが効果的です。

3. サービスの停止

ブロックや攻撃の回避が効果を発揮しない場合、攻撃を受けているサービス(例:PDFダウンロード機能、ショッピングカート、内部ルーターなど)を停止する必要があるかもしれません。

ただし、ウェブサイト、アプリケーション、内部ネットワークを部分的または完全に停止することは非常に混乱を招くため、この手段は慎重に検討する必要があります。このステップは、手順1や手順2で十分な時間を確保できない場合にのみ実行すべき最後の手段と考えてください。

サービスの停止を検討する際には、影響範囲を最小限に抑えつつ、迅速に他の防御策を実施する準備を進めることが重要です。また、停止するサービスに関するユーザーや関係者への適切な通知も必要です。

4. 追加の保護を有効化する

インシデント対応チームの一部が現在の攻撃を止めようとしている間に、他のメンバーは以下の方法でDDoS攻撃に対する追加の保護を有効化する準備を進めるべきです:

  • ISPへの連絡: ISPに連絡し、ウェブサイト、アプリケーション、公開されたデバイス(ファイアウォール、サーバー、ルーターなど)に対する外部DDoS保護サービスを設定してもらいます。
  • ファイアウォール保護の評価: WAF(Webアプリケーションファイアウォール)サービスを導入したり、既存のWAF設定やポリシーを調整することで、ネットワーク防御を強化し攻撃をブロックします。また、内部トラフィックを次世代ファイアウォール(NGFW)を介してルーティングすることも検討します。
  • レートリミットの調整: ネットワーク機器でリクエストのしきい値を設定し、既存のファイアウォールやサーバー、関連リソースに流入するトラフィック量を制限します。
  • ツールの追加: ネットワークやウェブサイトの保護を強化するため、ネットワークセキュリティ製品、侵入検知システム(IDS)や侵入防止システム(IPS)、FWaaS(クラウドファイアウォールソリューション)を追加またはアップグレードします。
  • 支援の依頼: インシデント対応の専門家やマネージドITセキュリティサービス(MSSP)ベンダーを雇い、DDoS攻撃を引き起こしているマルウェアの特定と除去を依頼します。

これらの対策は攻撃の即時対応だけでなく、将来的な攻撃を防ぐための基盤を築くことにもつながります。適切なプロテクションを組み合わせることで、ネットワークの安全性を大幅に向上させることが可能です。

ただし、追加の保護を導入する際には、既存のアーキテクチャやパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があることに注意してください。例えば、DDoSツールによって負荷分散装置が迂回されたり、DDoS保護アプライアンスによるパケット検査がトラフィックに遅延を引き起こす可能性があります。

また、回復プロセスの一環としてフォレンジック調査やセキュリティ調査が必要になることを忘れないでください。特に、サイバーセキュリティ保険の申請が関わる攻撃では重要です。攻撃者による初期感染経路やアクセスポイント、導入されたマルウェア、システムに加えられた変更を特定し、削除することで、将来的なDDoS攻撃やランサムウェア、データ窃取などの他の攻撃を防ぐ必要があります。

第2段階: 分析

攻撃が明らかになる場合もありますが(すべてが停止するような状況)、多くの場合、DDoS攻撃の初期段階ではリソースが「おかしな動作」をし始める期間があります。この段階では、リソースが攻撃に対処しようとするものの完全に正常に機能しない状態が続きます。

いずれの場合でも、攻撃を完全に止めるには、攻撃を認識し、ログを確認してDDoS攻撃の種類を特定し、可能であれば攻撃元を追跡する必要があります。これらの分析が迅速かつ正確に行われることで、適切な対応策を講じるための土台が築かれます。

DDoS攻撃の兆候を認識する

DDoS攻撃の最初の兆候は遅延として現れます。アプリケーションの動作が遅くなったり、ウェブサイトの読み込みが遅延したり、サーバーがリクエストに対して応答を返すのが遅くなる、といった形です。

攻撃を受けているインターネット接続の背後にいるユーザーは、インターネットに接続できなくなったり、ローカルリソースを利用できなくなったりすることがあります。ネットワーク運用センター、ファイアウォール監視ツール、クラウド使用状況ツール、その他の監視ソリューションは、ネットワークやインターネットトラフィックの急増を検出する場合があります。

攻撃が進行すると、リソースは完全に使用不能になることがあります。これにより、診断ツールの実行やログファイル、レポートへのアクセスさえも不可能になる場合があります。そのため、チームはできる限り迅速に対応し、リソースが分析用にログを送信することを優先できるようにする必要があります。

ログ、アラート、記録の確認と分析

理想的には、問題の最初の兆候は、帯域幅、アプリケーションのパフォーマンス、メモリ、またはCPUの問題を監視するツールやソフトウェアからのログやアラートとして現れます。これらのアラートは、インシデント対応チームが迅速に行動を開始し、リソースがダウンする前にDDoS攻撃を防ぐための助けとなります。

ポイント: すべてを記録すること

DDoS攻撃時のこれらの記録は、以下のようなチームや関係者にとって貴重な情報源となります:

  • インシデント対応チーム: デジタルフォレンジクスやインシデント対応チームが、攻撃を分析して何が起きたかを把握し、将来的な攻撃を防ぐための対策を立てる際に活用します。
  • サイバーセキュリティ保険: 多くのサイバーセキュリティ保険会社は、損害を計算する際にログやレポートのコピーを必要とします。保険申請を行う際、これらは必須の資料となります。

アラートがない場合、組織は顧客や内部からの苦情に頼らざるを得ませんが、リソース(アプリケーション、サーバーなど)の混雑や、ネットワーク全体がDDoS攻撃によって機能停止するまで対応が遅れる可能性があります。そのため、監視ツールを活用し、迅速なアラートを受け取れる体制を整えることが重要です。

攻撃の特定(Attack Characterization)

攻撃の特定は、攻撃トラフィックと正当なトラフィックを分離し、攻撃の種類を特定するために行われます。例えば、プロトコルを利用してインフラを無効化する攻撃には、アプリケーションの特定機能を標的とするアプリケーションレベルの攻撃とは異なる対応が必要です。

DDoS攻撃にはさまざまな種類があるため、どの攻撃が仕掛けられているかを正確に特定するのは難しい場合があります。それでも、インシデント対応チームはログを分析し、攻撃に関する情報や可能な防御策を特定します。

デジタルフォレンジクス調査

DDoS攻撃においては、マルウェアがどのようにネットワークに侵入し、攻撃を開始したのかを解明するためにデジタルフォレンジクス調査が必要になる場合があります。調査員は次のような作業を行います:

  • 証拠の収集: 攻撃の詳細を記録し、後続の分析や対策に活用。
  • 攻撃者とマルウェアの排除: ネットワークから攻撃者の痕跡やマルウェアを完全に除去。

攻撃の特定は、現在の攻撃を効果的に止めるだけでなく、将来の攻撃を防ぐための重要なステップです。迅速かつ正確な分析を行い、最適な防御策を実施することが求められます。

攻撃の追跡(Attack Traceback)

DDoS攻撃の追跡は、攻撃の発信元を特定することを目的としています。例えば、攻撃が特定のIPアドレス範囲に追跡できた場合、IPブロックを使用して攻撃を遮断することが可能です。

ただし、攻撃の追跡は非常に困難であり、多くの場合、実際の攻撃者にたどり着くことはできません。以下の理由がその背景にあります:

  • IPアドレスのスプーフィング(偽装): 攻撃者はIPアドレスを偽装することで、自身の位置を隠し、追跡を難しくします。
  • ボットネットの使用: 攻撃者は多数の感染デバイスを利用して攻撃を実行するため、追跡は各デバイスに分散され、困難が増します。

攻撃追跡の目的

攻撃の追跡が完全に成功しない場合でも、以下の利点があります:

  1. 防御の強化: 発信元の範囲を特定することで、IPブロックやジオフェンシングなどの対策を講じることが可能になります。
  2. 調査の支援: 攻撃元の手がかりを記録することで、法的措置や将来的なセキュリティ対策の一環として活用できます。

攻撃追跡は直接的な防御だけでなく、今後のインシデント対応能力を向上させるための重要なプロセスでもあります。

第3段階: 回復(Recovery)

DDoS攻撃を迅速に排除できた組織は、多少の不便を被る程度で済むことがあります。しかし、そうでない場合、次のような手順で回復プロセスを進める必要があります:

  1. 被害の評価
    攻撃によって生じた影響を評価し、システムやサービスにどの程度の被害が出たかを確認します。これには、ダウンタイム、データの損失、財務的影響、顧客への影響などの分析が含まれます。
  2. 必要な調整の実施
    DDoS攻撃の復旧過程で必要となった変更や修正を実行します。これには、セキュリティポリシーの見直し、システムの修復、リソースの再配置が含まれる場合があります。
  3. 再発防止策の検討
    同様のDDoS攻撃が再び発生するのを防ぐため、原因を特定し、即時実行可能な対策を導入します。たとえば、攻撃元をブロックする、ネットワーク構成を変更するなどの措置を取ります。
  4. その他の予防策の検討
    将来の攻撃に備え、さらなるセキュリティ強化策を検討します。例として、以下のような対策があります:
    • DDoS保護ツールやサービスの導入。
    • 定期的なセキュリティトレーニングや模擬攻撃シナリオの実施。
    • システムやネットワークの監視体制を強化。

DDoS攻撃による被害

DDoS攻撃による被害は、組織によって異なり、影響を受けたリソースによっても左右されます。しかし、Coreroの最近の調査によると、DDoS攻撃による損害額は、組織によっては1時間あたり数十万ドルに達し、大規模な組織では最大で100万ドルに及ぶことがあります。平均すると1分あたり約6,000ドルの損害が発生しているとされています。ただし、これらの調査結果には、その他のコストや、事業損失や評判への影響は含まれていません。

DDoS攻撃後、組織は保険申請や、将来のDDoS攻撃を防ぐためのツールやサービスの予算を計画するために、被害額や損害の詳細を記録する必要があります。

DDoS攻撃後の調整作業

攻撃を止めるために急いでアーキテクチャやソフトウェアに変更を加えた結果、他の問題を引き起こすことがあります。回復プロセスの一環として、インフラを精査し、破損したコンポーネントやリンクを検出して修正する必要があります。例えば、ウェブサイトをDDoSフィルタリングサービスの背後に移動させた場合、メインドメインだけでなく、サブドメインも手動で移行する必要があることがあります。

同様に、他のサードパーティツールとの統合も追加の設定を求められる場合があります。例えば、出版系のウェブサイトでは、DDoSプロバイダーによって保護された公開コンテンツにウェブコンテンツ管理システムが正しく接続できなくなり、再接続のために設定変更が必要になることがあります。

ネットワーク内から発信されたDDoS攻撃の場合、個々のコンピュータシステムをマルウェアから除去し、攻撃者がデバイスに再びアクセスできないようにする必要があります。この作業がデータやシステムの復元を必要とすることもあります。

攻撃後の調整作業は、組織の機能を完全に復元し、将来の攻撃に備えるために不可欠なステップです。

DDoS攻撃から得られた教訓

DDoS攻撃後には、発生したすべての出来事を詳細に記録し、同様の攻撃から組織を守るための対策を明確に説明した教訓レポートを作成する必要があります。このレポートでは以下を含めるべきです:

  1. 攻撃の概要
    • 攻撃の発生日時、期間、影響を受けたリソース。
    • 攻撃の種類や攻撃元の特定が可能であれば、その詳細。
  2. 対応と対策
    • 攻撃に対して実施した対応策の概要とその効果。
    • 攻撃中に発生した問題や障害。
  3. 再発防止策の提案
    • 同様の攻撃を防ぐための具体的な緩和策を提示。
    • 緩和策を即時に実施できない場合は、計画を立て、予算化の提案を行う。

コストと予算の比較

攻撃の復旧に要した費用や、ダウンタイムによる事業損失を計算することで、緩和策にかかる予算との比較対象を明確にします。この比較により、将来の投資効果を経営陣に説明しやすくなります。

実施の重要性

この教訓レポートは、単なる記録ではなく、組織のセキュリティポリシーを強化し、リスクを最小化するための重要な資料です。迅速な実施が難しい場合でも、早急に計画を立て、次回の予算編成に反映させることが求められます。

将来のDDoS攻撃を防ぐための5つのステップ

ITおよびセキュリティチームは、DDoS攻撃に備えた対策を講じることで、攻撃発生時の影響を管理・制御する準備を整えることができます。以下は、そのための主要なステップです:

  1. 攻撃に耐えうる環境の強化
    • システムやソフトウェアを最新の状態に更新し、セキュリティパッチを適用します。
    • 設定を見直し、攻撃からリソースを保護するための設定を行います。
  2. DDoS対策アーキテクチャの導入
    • リソースを適切に構成し、ポリシーを実施して、潜在的な攻撃から保護するとともに、攻撃が成功した場合の影響を最小限に抑えます。
  3. DDoS対策ツールの活用
    • DDoS攻撃を検知し、防御または影響を軽減するための機能を有効化し、必要なツールを追加します。これにはファイアウォールや侵入防止システム、DDoS専用の保護サービスが含まれます。
  4. DDoS対応プレイブックの作成
    • セキュリティ、運用、管理チームがDDoS攻撃にどのように対応するかを記載した計画を作成します。これには、即時対応手順や役割分担が含まれます。
  5. DDoS監視の導入
    • 攻撃の兆候を監視し、スタッフにアラートを送るための監視ツールを導入します。早期警告により、迅速な対応が可能になります。

攻撃者の動機を考慮する

また、攻撃者の動機を考慮することも重要です。一部のDDoS攻撃は、スパイ行為、ランサムウェア、またはビジネスメール詐欺(BEC)など、他の攻撃のカバーとして使用されることがあります。そのため、DDoS対応プレイブックには、攻撃発生時に他の潜在的なリスクも監視するプロセスを含めるべきです。

これらのステップを実行することで、DDoS攻撃の影響を最小限に抑え、組織のセキュリティ体制を強化することが可能です。

結論: 今すぐ準備するか、後で苦しむか

攻撃者の手口がますます洗練され、高度化している現状では、防御側は常に警戒を怠ることはできません。DDoS攻撃を阻止することが一層困難になるだけでなく、攻撃者はチャンスを見つけると、さらに迅速にそれを悪用するようになります。

組織は、将来のDDoS攻撃に備えるため、今すぐに準備を始めるべきです。利用可能な高度なツールやサービスを活用することで、攻撃への耐性を高め、潜在的な被害を軽減することができます。準備を怠れば、後々多大なコストと影響に苦しむことになるでしょう。

DDoS攻撃とは何ですか?

サーバーやネットワークに大量のトラフィックを送り込み、正当なユーザーが利用できなくするサイバー攻撃の一種です。

DDoS攻撃を完全に防ぐことはできますか?

完全に防ぐことは難しいですが、適切なセキュリティ対策やツールを導入することで被害を最小限に抑えることができます。

DDoS攻撃の兆候をどうやって見つけますか?

サーバーやアプリケーションの動作が遅くなったり、トラフィックが異常に増加したりする場合はDDoS攻撃の兆候である可能性があります。

DDoS攻撃の対応に必要なツールは何ですか?

ファイアウォール、DDoS保護サービス、監視ツール(例:WAF、IDS/IPS)などが有効です。

DDoS攻撃への準備はどうすれば良いですか?

監視体制の強化、セキュリティプレイブックの作成、攻撃を緩和するための設定やツールの導入を行いましょう。